これは僕たちが小学6年生の頃の話です。 当時、僕の住んでいた町は山の中の田舎だったため、学校までの登校する道は坂道が多く、上り坂は辛いのですが、 下校の時は下り坂のため帰りは友人のAと自転車で競争するのが日課でした。 ある日、Aが7段変速ギア付きのちょっと高そうな自転車で登校してきました。 Aは僕の自転車をジッと見て言いました、「今日は俺の勝ちは確定やな。(どや顔)」 僕は悔しくて、「いや、負けへん。」とだけ言いました。 そして、その日も下校は競争で、そのAの自転車は変速が付いてるためか、 とても下るスピードは速くて、僕は追いつく事ができず20mくらい後ろのほうで追いつくのに必死でした。 帰り道の途中、坂道のカーブに差し掛かった所の出来事でした。 Aが先に曲がり、その後ろ姿は見えていたのですが、僕が曲がる時にはAの姿が消えていました。 そして、曲がったすぐはガードレールを挟んで田んぼでした。 そのガードレールには前輪と後輪がドッキングした、知恵の輪のようになったAの自転車がありました。(笑) Aは藁の草に転げ落ち、泣きながら自転車を死んだ魚のように見つめていました。(笑) 僕は笑いを堪えながら、「A,大丈夫?」と言いました。 するとAは泣きながら、こう言いました、 小さな声で「これ…これ…親父の…(涙)」 そうです。あれだけどや顔をしていた、この自転車はAの父の自転車だったのです。(笑) Aは体の痛みよりもAの父から黙って勝手に乗って来た今は知恵の輪のようになってしまった自転車の事で 叱られることが怖く大泣きでした。(笑) 反対に僕はAのどや顔が浮かぶ度に大笑いでした。(笑) 後日談ですが、Aはこっぴどく叱られ、登校は徒歩になりました。(笑)