半纏を探していた時の話

中学生の頃、母が初めて半纏を買ってきてくれました。オレンジ色の可愛い絵の入った綿入れで、家で気に入って着ていました。雪国の子供の気分で当時嬉しかったのを今でも覚えています。 我が家では半纏の事をはんこと呼んでいました。徳島の方言でしょうか、我が家だけの方言でしょうか、寒いと言ったら、「はんこ着とき。」とよく言っていました。 ある日の夕方、半纏が見つかりません。あんな大きなものなくすなんてと自己嫌悪の中探している所に姉がやって来ました。 姉 「どしたん?」 私 「はんこがないんよ」 姉 「この前この辺で見たよ」 一緒に探してくれる優しい姉、部屋の中をうろうろしながら台の上や机の引き出しを探し出しました。 姉 「この前この辺で見たんやけどな。」 お姉さん、引き出しにはんこは入らないと思います。 私 「はんこでよ」 姉 「はんこじゃよ」 と引き出しを次々開けていく姉、 私 「姉ちゃん、私の探してるんは、はんこでよ、引き出しに入るわけないやろ!」 半分キレ気味な私 姉 「ほなけんはんこさがっしょるよ!」半分キレかけの姉 やっとわかった私 私 「私の探しているのは『はんこ』、姉ちゃんが探しているのは印鑑やろ?」 姉 「はんこっていうたでー」